スペイン、2013年の作柄: 春の降雨と霜で収穫は遅れたが、熟度は良い

スペイン、2013年の作柄: 春の降雨と霜で収穫は遅れたが、熟度は良い

2013年の作柄にとって一番の要因は雨である。3年間の大変乾燥した気候のあと、やっと多くの地域で雨が降った。春には、しばしば低温で遅霜が発生した。全般的に、収穫は例年よりも遅れて始まったが、そのため、成熟期間が長くゆっくりと続き、ブドウが最高の状態になった。収穫最終期の雨と雹(ひょう)により収穫が中断された地域では、生産者が注意深く選別をするにいたった。

多くの困難はあったが、この涼しい気候によって、2013年のワインは、概して、フレッシュで力強いものとなった。

遅い収穫、さらに15~20日収穫が遅かった地域では、20~30年前に引き戻されたような感があった。農家では、昔のように、10月半ばのピラール祭の連休に家族で集い、収穫をしたであろう。

干ばつが多くの地域を襲った2012年より全般的に収穫は増えた。

1.ガリシア

DOリアス・バイシャス

2013年は、このDO(原産地呼称)にとって、史上2番目の大きな作柄となった。ほぼ4200万キロに達した2011年に次ぐもので、2012年よりも92%も増量となった。

バル・ド・サルネスが最大の生産地域であった。それに、コンダド・ド・テア、オ・ロサル、リベイラ・ド・ウリャ、ソウトマイオールが続く。ソウトマイオールは、生産が134%増で、最大の増加率を見せた。

収穫は、天候のために素早く行われなければならなかった。収穫する数日前に降った雨の結果、一部ボトリティス菌の影響を受けた。しかしながら、これは、収穫量が多かったため、影響は小さくすんだ。
Terras Gaudaワイナリーのエミリオ・ロドリゲス氏は、2013年のワインは、熟した果物の味がする、甘く、アロマティックなものとなるでしょう。現段階で言うのは難しいのですが、間違いなく、リッチで濃厚で新鮮な酸味を持つものとなるでしょう」と語っている。

リアス・バイシャスの2013年の作柄は3400万キロである。白ワイン用のブドウでは、アルバリーニョ種が全てのブドウ生産の97%を占める。ロウレイロ種、トレイシャドゥーラ種、カイニョ・ブランコ種も量は少ないが生産されている。0.7%を占める黒ブドウ種では、主に生産されているのはソウソン種である。ワイナリーの数は175である。

2.ドゥエロ渓谷と北西部

DOビエルソ

2013年は湿度の高い冬から始まった。続いて涼しい春がやってきて、つぼみが開くのが遅れ、その数週間後の遅霜によって、いくらかダメージを受けた。ブドウが色づき始めたのは、8月5日の週からで、2012年に比べほぼ2週間遅かった。このような遅れは見られたものの、ブドウ畑は良い状態であった。ブドウの房が小さくなったこと、そして、熟すのがゆっくりだったことで、ブドウの質が高まった。

Pittacumワイナリーのアルフレド・マルケス氏は、「9月の最終週に収穫し始め、10月12日で終えました。雨もいくらか降りましたが、心配するほどではありませんでした。涼しい日もあり、ひどい露のときもありましたが、収穫が遅れたことで、ブドウに良く水分が行き渡り、満足いく熟し具合となりました」と語った。結果として、「ワインは、品種の特徴とエレガンスが強くでるでしょう。これは、気候が昔と大変良く似ていたからです。ここ最近の10年よりも、涼しく乾燥していました。2013年は、本物のビエルソワインが再び生産されます。それは、アルコール分がより少なく、ボディはしっかりしていて、少し過熟気味で、よりやさしく優雅です」と話している。

同様に、リカルド・パラシオス氏も語っている。「収穫期に10日間雨がひどく降り、ブドウの状態を心配しだしました。ただでさえブドウが熟すのが大変な年にだったらです。しかし、最も人目につかない場所(何世紀もブドウ栽培をしていた畑)こそが、この異常気候に適応したのです。そして、最も雨が多かった地区(最高で一日に20リットル)が、標高が高いところにあったこと、水はけが大変よかったこと、そして、生産が大変限られていたことで、最も良く対処することができました。湿気や不安定な気候に完璧に適応することができた畑でした。結果、2013年のビエルソのワインは、かつてビエルソが見せていたスタイルに少し戻ったものとなるでしょう。より大西洋的であり優雅、繊細で新鮮なアローマに満ちている。花の香りがありミネラル感が強いワインだ。僕が15年前に初めて作ったワインを思い出させる。」 

ビエルソの2013年収穫量: 1,550万 kg

DOリベラ・デル・ドゥエロ

収穫は、12日から14日遅く始まったが、ブドウは大変良い状態であった。全般的に、8500-9000万キロの生産が見込まれている。

尚、リベラ・デル・ドゥエロ原産地呼称委員会は2013年のワインの評価を"Buena"(Good)と発表した。

DOルエダ

収穫は、2012年より15日遅く始まった。夏は乾燥していて9月はいつもよりも気温が高かったおかげで、ブドウの成熟が進んだ。

Hacienda Zoritaのダビド・グティエレス氏は、「強く雨が降ったので、ブドウへのダメージを避けるため、いつもよりも素早く収穫しなければなりませんでした」と話した。

ビクトリア・パリエンテ氏は、「ひどい時期でした。収穫を始めようとしていた2日前、ブドウは完璧な状態で、酸味も完璧でした。そうしたら、ここでは、通常、1年で300リットルしか降らないのですが、4、5日で120リットルの雨が降ったのです。乾くのに、3日から8日待たねばなりませんでした。ふつうは機械で収穫するところで、泥に膝まで浸かって収穫しました。ブドウがわれ始めたので、ボトリチス病を避けるため、素早く収穫しなければなりませんでした」と語った。

ルエダの21013年作柄 もし、収穫量が予想通り9500キロに届いたら、このDOの白ワインは、初めて、リベラ・デル・ドゥエロを超えることとなる。ダビド・グティエレス氏は、「酸味のレベルが良く、もしかしたら、わずかにアルコールが少ない、香り豊かなフレッシュなワイン」と期待している。

DOトロ

トロでも降雨があった。2012年10月から2013年3月までで、285.9ミリの雨が降った。これは、2011‐2012年の同期に比べ356%多く、2005年から2011年の平均降水量よりも14%多い。冬の厳しい霜を避けることはできたが、その代わり、4月の終わりに、ひどい降霜を伴った突然の寒さに襲われ、15%から90%のブドウ畑が被害を受けた。最も標高が高い地域が最大の被害を受けた。

6月半ばに、湿度と夏の暑さのため、うどんこ病の危険があった。8月は暑く日が良く照ったが、収穫は前年より12日から15日遅れた。9月19日に始まったが、後の降雨のため、素早く終わらせなければならなかった。

トロの2013年作柄 わずかに減り、1750-1900万キロ。全体の結果としては、2013年のワインは、大西洋的性格を見せるということが言えるだろう。すなわち、pHは低く、フレッシュさは突出し、アルコール分は僅かに低いということである。

3.北部

DOCaリオハ

2013年は、今世紀、リオハで最も遅い収穫となった。また、収穫量としても最も少ない年の一つで、3億6830kgであった。しかし、干ばつに苦しんだ2012年の3億5500kgよりは多少上回った。熟練した選別により、作柄のクオリティは良いものとなりそうである。

リオハ・アルタ地区のロダワイナリーでは、2013年は、「とても大西洋的な側面」を備えていると言える。2013年は、ここ数年で、最も温度が低く、また、2年間異常に乾燥した年の後であった。素晴らしい酸味と低いpHと、そしてたぶん、香りがより高いものとなるであろう。収穫には、2つのキーポイントがあった。1)我々の場合では、熟すのが3週間近く遅れた。2)2012年の干ばつのため、花が少なく、さらに2013年の開花時期に降った雨のため花ぶるいが起こり、収穫量が少なかった。

ロダはまた、若いブドウの木と古いブドウの木での違いを上げた。「古い木は、大変良いクオリティを示していますが、若い木、特に良く実を結ぶ木は、熟すのに問題がありました。」

生産者たちは、収穫期に特に注意を払わなければならなかった。全般に良い天気ではあったが、多少雨も降り、暖かさに伴いボトリチス病の危険があった。そのため、綿密に選別しなければならなかった。また、収穫直前に、珍しくひょうが降った。ひどい被害を受けたワイナリーの一つが、コンティーノであった。結果として、ヘスス・マドラソ氏は、「今年は46,335kgの収穫でした。いつもの平均は、375,000Kgなのですが」と語った。

アルバロ・パラシオス氏はこう語った。「すばらしい年だった。酸度がありとてもフレッシュなのに、前例のないほど濃縮されたブドウが収穫できた。冬と春の降雨量が過去10年においてもっとも多かった。ワインには信じられないほどの強さがある、豊富でアロマティックで酸に裏付けられたタンニンも豊富だ。もっとも驚いている点は濃厚な香りと抜きん出たフレッシュさだ。心躍るワインだ」。

又、リオハ特選原産地呼称統制委員会は2013年産のワインに"Buena" (Good)の格付けを与えた。

DOナバーラ

2013年の収穫作業は前年と対照的で、平均的に20日間遅れで始まった。例年通り、五つのサブゾーンのうち、最も暖かいリベラ・バハから9月10日に作業がスタートし、シャルドネから始まった。このような日程になると、80~90年代の代表的な作業スケジュールに戻ったようだ。あの時代では過熟したブドウを求め、そして家族のメンバーが集まる連休を狙って、10月中旬を中心に収穫作業が行われていた。
この遅れの原因は異常に雨の多い冬、そしてその後の寒い春で6月まで続いた低い気温による。幸い暑い夏が来たら土壌に残った余分な水分はなくなり、ブドウの程よい熟成が可能となった。果実の状態がよく、これといった病害は目立たなかった。夏は日較差(昼と夜の温度差)が大きく、それはブドウのの高品質につながった。
2013度の収穫量は69.5百万キロに上り、前年より10%増となった。9月中旬に降った雨は成長中のブドウに良い影響を与え、ゆっくりかつ適当な果実の成長を促した。尚、収穫されたブドウの約90%は黒品種である。

4. カタルーニャ・レバンテ地方

DOカタルーニャ

2013年の特徴は夏が涼しかったことだ。それ以前に降った雨によって、土壌に水分が蓄積された。この二つの条件があいまって、ブドウの生育サイクルを遅らせた。日較差が例年より大きかったため、ブドウの実の成熟がゆっくりで、アロマやフェノールを十分引き伸ばすことができた。
収穫の早かった2012年と比べて、作業が2~3週間ほど遅く始まった。海岸沿いや北中部の一部の地域では遅れて発生した暴雨によってボトリティスが発生し、できるだけブドウの収穫をすることとなった。
2013年度の収穫量は前年と比べて、15~20パーセント増となった。

DOモンサン

9月の初めに収穫作業が始まった。寒く且つ乾燥した冬はブドウの発芽を遅らせた。春に降った雨が良い植物成長を促進し、乾燥したもののそれほど暑くない夏に恵まれ、ほどよいバランスの果実ができた。
2013年のDOモンサンでの収穫量は7~9百万キロとされている。うち、95%が黒品種である。

DOCaプリオラート

2013年の春が雨が多く、5月と6月が寒く、そして暑くて乾燥した夏。雨が生育サイクルを延長させ、その結果収穫作業は2~3週間遅れた。一般にブドウの状態が非常によかった。プリオラートに際立った違いのある各サブゾーンがあるため、収穫作業は長く、9月中旬に始まり、11月中旬まで及んだ。
2013年の収穫量が5.35百万キロに上り、2012年と比較して11パーセント増えた。
収穫されたブドウは地域独特の特徴を持っている。熟成がほどよく、糖質が豊富で、酸味のバランスが取れている。

5. 南部:ヘレス

DOヘレス

旱魃により2012年の収穫量が非常に少なかったので、13年は素晴らしい収穫年となったことに非常に満足している。
冬に大量の雨が降り(平均で620ミリリットル、一部では800ミリリットルに達した)土壌に十分に水分を充当できた。春は短く急激に気温が上がったが、地区により気温はまちまちだった。そのためブドウの成熟は不均衡で、ある地区でボーメ度が11.5度以上に上がっていてもほかの地区では規定の度数に達するまで時間がかかった。8月にレバンテからくる東風が弱かったため大きな収穫に繋がった。
機械収穫はより進み全体の70%に及んだ。そのためより気温が下がっている夜間収穫が可能となった。2013年のヘレスの収穫量は80百万キロ(8000万キロ)に及んだ。12年より70%増えた。

出典
・Wines from Spain 英国版HP
・ナバーラ原産地呼称統制委員会HP
・プリオラート特選原産地呼称統制委員会HP
・リベラ・デル・ドゥエロワイン原産地呼称統制委員会HP
・リオハ特選原産地呼称統制委員会HP

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