オーガニック・ワイン
オーガニック・ワイン
スペインには事実上、化学残留物なしでワインを造ってきた伝統があります。それは、凍てつくように寒い冬、非常に乾燥した暑い夏という大陸性気候の地域が多く、そこで生き残れるミルデューやボトリティスの菌類、そしてぶどうに付く毛虫などの類が非常に少ないので、栽培家は最低限の予防対策をとるだけでよかったからでした。
20世紀後半になってほかの国々にだいぶ遅れてスペインにも化学肥料や殺虫剤が導入されましたが、その時点でこれらの化学肥料や殺虫剤がかならずしも葡萄の品質のためには良くないことが認識されていました。そのため使用する場合でも量は非常に低く抑えられています。他方昔ながらの、そうとは気が付かないまま、ほとんど有機栽培方法で葡萄を栽培している農家がスペインには多く存在しています。この伝統的な栽培方法は、あまりのあたりまえのことだったので強調されることもなく、スペイン産オーガニックワインのことはこれまであまり知られていませんでした。
ビノ・エコロヒコとスペイン語で呼ばれるオーガニック・ワインはヨーロッパ連合の法に従い、国内では農水省内に設けられたCRAEが1980年代に定めた生産基準に大半の州が倣い、検査認証は17の自治州政府農業局のなかの有機農業委員会が行い、各州ごとに認証シールが発行されています。
ひとつのワイナリーでオーガニックとそうでないワインの両方を造っている場合は、タンク、樽、さらに醸造・熟成を行う場所を分けなければならないと規定され、また遺伝子組み換え、野生酵母以外の酵母、化学的な安定剤の使用も禁止されています。ワインに含まれる亜硫酸の最大量は、若い赤ワイン70mg/l、1年以上熟成させるクリアンサ、レセルバ、グラン・レセルバは100mg/l、白(辛口)が80mg/l、甘口100mg/l、酒精強化とリキュール80mg/l、発泡酒50mg/lまでと規定されていますが、大半の赤白ワインに関しては年4回の検査で、亜硫酸の量が各カテゴリーごとの規定最大量の半分であるよう指導されます。
自由な発想のワイン
最近、原産地呼称の認定地域を外れた土地で造られるワインや、使用ぶどう品種など、原産地呼称委員会の規定にしばられずに造るワインによって高い評価を得る醸造家がでてきましたが、これらのワインはワイン法上、あくまでもビノ・デ・メサ(テーブル・ワイン)のカテゴリーとなります。また、原産地呼称ワインでも、合計熟成期間が規定を満たしているにもかかわらず、樽熟成期間の自由裁量を求めて、レセルバやグラン・レセルバではなく、クリアンサの表示を選ぶ醸造家もいます。このように、自由な発想をする醸造家が増えてきて、スペインではますます多様なワインが造られています。